あえのこと命の源遡り
最果てに温故知新の里があり
御恩謝し田の神様をお迎えし
早春に豊穣祈りお送りす
土は糧鍬振る所作に神宿り
代々に神恩繋ぐあえのこと

ⓒ石川県観光連盟
田の神様を家にお招きし、一年の収穫を感謝する神事が始まります。
当主が提灯をかざし、田に神様をお迎えに行き、「田をお守りくださり、ありがとうございました」と感謝の言葉を述べます。田には鍬を3回打ち、家に夫婦神のお二人をお連れいたします。田の神はお二人とも目が不自由なため、当主がお手を引き丁寧に神様をご案内します。
一年の田のお守りに厚く感謝し、お風呂に入っていただきます。その際、湯加減をお聞きし神様の背中を流したりもします。
その後、籾俵にお座りいただき、この一年に収穫されたお膳を用意いたします。
神様の賜物であるお膳の品々を一品づつ説明し、召し上がっていただきます。
食材は丹精込めた新鮮なものばかり。新米、甘酒、大根はじめ、のと野菜の数々。
時は収穫後の12月5日。座敷には当主をはじめ、一家の皆さんがそろって感謝を捧げます。
この神事はその家により代々受け継がれ、子供さんたちにも口上や所作がしっかりと伝えられます。
その後、お膳のおさがりを家族みんなでいただき、お迎えの神事が終わり、田の神様に厳しい冬を家で過ごしていただくのです。
年が明け春耕前の2月9日頃、本年の五穀豊穣をお願いし、再び丁重におもてなしをしたうえで、田にお送りいたします。
動画からはピーンと張りつめた空気が感じられます。
大自然は大きな恩恵をもたらしてくれますが、時に予想外の天災ももたらします。
一粒の籾、一粒の麦さえ神の恩恵として大切に育てる。
農耕の大地に感謝を捧げ、田の養生に努める。
田の江に引いた、わずかな水も無駄にしない。
それでも一年後の収穫は確かなものではありません。
五穀豊穣とは神様のご加護と農耕に励む人との賜物なんですね。
「あえのこと」の神事に大きな示唆をいただきました。

「あえのこと」の神事並びに、能登半島北部に広がる「能登の里山里海」は、国内はもちろん、海外からも高く評価されているんですね。「あえのこと」は、
1976年には、国指定重要無形文化財に
2009年には、ユネスコの無形文化遺産に登録されました。
また、「能登の里山里海」として、世界に遺すべき貴重な農業地域として評価され、
2011年には、国連食糧農業機関の世界農業遺産に認定されました。
世界農業遺産としては、同じ2011年に新潟県佐渡市の、
「トキと共生する佐渡の里山」と同時に認定されたとのことです。
国の特別天然記念物のトキも、水田、水路、ため池等で生息します。
野生のトキの最後の生息地が能登半島だったそうです。
生物多様性といわれますが、野生のトキこそが身をもってその困難さを感じていたのかもしれないですね。
SDGsという素晴らしい国連の提言があります。
SDGsが目標とする素晴らしい提言は、同時にこれから解決するべき課題でもあります。
能登半島の突端で営々といとなまれている「あえのことの」の神事は、多少なりとも、地球規模で貢献しうる要素があると思います。