霜月や小春日和に帰り花
原石を磨き続けた一言居士 | このバッターこのコースならチャンスあり |
数秒後ドラマのような展開が | ドンピシャリ満座の中の大魔術 |
夏の夜白く尾を引く流れ星 | IDと夜空の饗宴天体ショー |
“富士には月見草がよく似合う” | 図書館で走れメロスを探した日 |
半世紀ワインの樽もかぐわしく | 寸鉄は耐震建築基礎の杭 |
水をやり手塩にかけて幾星霜 | ボッソリと俺の花だよ月見草 |
ただ一人捕手で獲得三冠王 | 強打のパ本塁打王実に9度 |
打点王チャンス逃さず7度獲り | 不沈艦通算打席は第一位 |
捕手の鬼ベストナインは数知れず | でもやはり生涯一捕手五つ星 |
青空に雲が流れて翳降りる | 半日陰ホームベースの心地よさ |
見極めろ打者の表情足の位置 | 出し入れはヒラメキヒントの詰合せ |
名捕手の知恵の袋は五角形 | 持ってけよ荷物にならない経験値 |
三冠王名将誉れ今でこそ | 沁み透る口調に滲む苦労人 |
貧しさにウエイトトレは一升瓶 | プロ入りもやっと合格テスト生 |
才無くも亀の歩みにムラは無し | 桜とて早咲き遅咲き冬も咲き |
ヒーローのインタビューに笑み浮かべ | 熱心な帰らぬファンに目を細め |
良かったなまだまだやれるぞ頑張れよ | 二度三度咲いた花ほどファン呼ぶ |
再生に裏方皆もひとしおだ | 帰り花俺の花だよ月見草 |
文豪の原稿もまた真っ黒け | 誰も知る大作家にしてこの迷い |
何につけ生み出すってことは大変だ | まずいんだゲームセットですサヨナラじゃ |
顧みる今日のノートは明日の糧 | 行間に教えてもらうこともある |
昭和史に南海ホークス輝けり | 四番打者四死球いずれか倒れ込む |
日本一決める試合の出塁に | 儲けたぞベンチにニヤリ見得を切る |
緊迫の雰囲気少し緩くなり | 間に力笑う門には福来る |
リリーフとクローザーとは似て非なり | もらったぞ2枚ストッパー腕を撫す |
中継ぎは監督采配見せどころ | ツギハギは弱者貧者の盛装だ |
定食も日替わりメニューがいいんだよ | 出番無しむしろ好機だ田を起こせ |
フィールドに一段高く立つ櫓 | 皆昔エースで四番打者ばかり |
天空の太陽いずれ西に落つ | 影長い夕焼けもまた乙なもの |
勝ち決めるクローザーになってくれ | 球界にひとつ革命起こそうぜ |
運不運勝ちに不思議の勝ちがあり | |
還れるか歴代一位犠飛高く | 天仰ぐ歴代一位併殺打 |
心せよ負けに不思議の負けはなし | |
間違うなもうダメだじゃないまだダメだ | 不器用は器用に勝つぞ最後には |
もったいないあたら才能使い切れ | |
序破急で景色が変わるぞ楽しいぞ | 人生は仕切り直しの連続さ |
すごいだろう冬の丹後の荒波は | 絵に描いた逆巻く波濤そのものだ |
新聞の束がズッシリ重かった | 病床の母がか細く言うんだよ |
悪いねえ克也って布団から見上げてね | こん時だよプロで稼ぐぞって思ったのは |
そりゃあもう貧乏だったなあの頃は | とにかくさ貧乏がほんとにやだったよ |
新聞に載ってたんだよプロテスト | 遠投が苦手な俺には無理かもな |
そしたらさそばから声がするんだよ | ちょっとだけ前に出ていい投げて見ろ |
ありがたい下駄を履かせてくれたんだ | ダメ元のつもりがまさかの合格さ |
始まりもカッコよくはなかったよ | |
忘るまじ母と先生故郷を
先生が自宅に来たのには驚いた | |
三年間ダメなら職を探します | お母さんプロ入り許してくださいって |
ポケットに先生からの電車賃 | 門出の日祝プロ入りの横断幕 |
故郷が夢をかなえてくれたんだ | |
現実は明けても暮れても壁の役 | 一年後解雇通告落ち込んだ |
真っ白い頭に故郷母の顔 | 帰れません命をかけて来たんです |
間一髪ホームベースに生還だ | 忘るまじ母と先生故郷を |
雷か二軍の監督みんな来い | おい野村お前の両手見せて見ろ |
みんな見ろ素振りでできた手のマメを | 故郷の水が詰まった一升瓶 |
振るほどに不思議に気持ちが良くなった | 正に独楽一緒に回った相棒だ |
手のマメがハワイの切符をくれたんだ | このキャンプ野村の進境収穫だ |
監督にようなったなあと褒められた | 日常に転換点が急に来る |
幸運と続けることとは類義語だ | 星月夜ハワイに一輪月見草 |
汐留に時代の幕開けゼロポスト | アプト式碓氷峠を駆け上がる |
デゴイチを何に例えん美のフォルム | 故郷にふと帰ろうかローカル線 |
はざ掛けにSL秋の美術展 | 陸蒸気汽笛一声150年 |
燃える夏庭にミミズが涼求め | 珍客に漏れるホースでお接待 |
赤とんぼウチにもどうぞ竿の先 | セールスの軒に巣立ったツバメの巣 |
宙返りツバメの曲芸詩片に | 名月やススキもウェーブホームラン |
スワローズ不死鳥さながら蒼天に | 世間ではバブルがはじけた傷深く |
隙あらば天災人災牙をむく | 情熱と冷めた科学の処方箋 |
ニッポンの再興示唆する黄金期 | ボヤキからひとひらの愛こぼれ落ち |
最高峰スーパースターに武者震い | 静寂にしわぶきひとつ憚るも |
望外の珠玉の対峙というべきや | 船の上扇の的はいざ知らず |
南無八幡腕よ虚空に弧を描け | 大菩薩地震も鎮めよ要石 |
虎千里六甲颪も箱根越え
その軌道一瞬なれど永遠に | 大打者をそばに見るのも役得だ |
よく見ろよどんな打者にも弱点が | 打たれたら相手のいいとこ貰っちゃえ |
強打者は汲めども尽きぬ井戸なんだ | 昭和史を飾るスターの大花火 |
そそり立つ東京ドームの絶壁を | 身を挺し徒手空拳でよじ登る |
大飛球虚空で掴まん心意気 | 地上のショー天の川まで覗き込む |
僕はただ投手の信頼応えたい | IDのIは愛かと腑に落ちる |
僕自身驚きますねあのプレー | 快音に五感が反応したんです |
一瞬で放物線がわかります | 力投の投手におくるエールです |
信じ合う守備が僕らの強みです | あのジャンプ守りのチームの証です |
その速度早回しかと思うほど | 水滑る忍者のような身のこなし |
四球二盗バント三進一人旅 | 本塁のクロスプレーもかいくぐり |
ゼロゼロのボードに1を刻む足 | 韋駄天は番狂わせの仕掛人 |
ホントだぞ用具のメンテはツキを呼ぶ | 用具には日々魂が宿るんだ |
エラー良しますますグラブが手に馴染む | スパイクは足の一部だ念入りに |
いわし雲人待ち顔のスニーカー | 旅割のそぞろ歩きもメンテだよ |
何を売る暖簾は店主の分身だ | 一芸も九人揃えば万屋に |
複利産む頭と足の二進法 | 商いは飽きずにやるから商いだ |
スコアラー黙々つける大福帳 | 木戸銭に男は黙って倍返し |
センターからホームに向かう強い風 | 1点差ヒットで同点逆転も |
ベンチから同点やむなし定位置で | あの時代絶対王者のライオンズ |
ここは押せ俺たちだってセの覇者だ | 風を読み肩を信じて前に出る |
根拠ある自分の直感信じろよ | 的射抜く陰の主役はノートです |
戦国史再現中国大返し | |
江戸百景大輪の花川開き | 熱帯夜四谷怪談札止めに |
何処から芭蕉が中継蝉の声 | 水かぶり火の中飛び込む町火消し |
子争い大岡裁きをベネチアで | 空に舞うセ界の王者スワローズ |
お白州で女二人が睨み合う | お奉行様この子の母は私です |
ならば問う双方子の腕引いてみよ | みずからに引き寄せた方実母とす |
細い腕子供は痛さに泣き叫ぶ | 一方の女はたまらず手を離し |
引き合いに勝った女はさあ帰ろう | ちょっと待て離した方を実母とす |
何故ですかお奉行様の言う通り | 泣き叫ぶ子の腕離すが母の愛 |
これからは楽しく一緒に暮らすが良い | 江戸市民やんやの喝采名裁き |
甲斐の国人は石垣人は城 | ひるがえる風林火山富士を発つ |
後背の西上州も攻め落とせ | 迎えるは支城砦の遊撃戦 |
大軍を撃退名城箕輪城 | 信玄に長野のうちはと言わしめる |
まず治水信玄堤に長野堰 | 名君が城下に開いた川光り |
名将の心はいつも一兵卒 | |
我が口上遠からん者音に聞け | もののふよ近くば寄って目にも見よ |
合戦の作法一変火縄銃 | 視界良しファウルゾーンは埒の外 |
本陣に軍使どっかり睥睨し | はかりごとマスクで隠すいぶし銀 |
天賦の才スーパースターにはお手上げだ | いいよなあファンがぎっしりいつだって |
閑古鳥犠牲フライは俺の花 | ひそやかにフォアザチームが誇りだよ |
終盤の一死満塁俺だろう | 初めてだチャンスで代打出されたの |
目の前で代打併殺ざまあみろ | ゾッとしたチームと同僚笑うとは |
潮時か一瞬よぎる妻の顔 | |
我々の世界は長くて20年 | 怪我年齢戦力外と裏腹だ |
自問せよ自分の売りは何なのか | 七つある相手の癖をそらんじろ |
何事も天命下るその日まで | 天の下基礎を重んじ革新せよ |
目が覚めぬ三流選手は無視をする | 伸びしろの二流選手を賞賛し |
最高峰目指す一流非難する | |
仮初めの財を遺すは下とすべし | 利が勝る仕事遺すは中であり |
未来継ぐ人を遺すは上である | |
誰しもが勝てないものは年齢だ | 嘆くまい逆に増えるぞ経験値 |
葉っぱから酸素が産まれて世に満ちる | |
秋深し二本のポールが天高く | ポール際フェアかファウルか語り草 |
一休みオレンジ色の長い影 | |
久しぶりに帰って参りました | 栄誉ある京丹後市の名誉市民 |
受賞に涙が溢れ止まりません | |
海は母逆巻く波は我が血潮 | |
故郷は私の人生そのものです | 生涯私は丹後を忘れません |